いただき 鳥取県

いただき 鳥取県

いただき(鳥取県の郷土料理)完全ガイド|歴史・作り方・地域文化を徹底解説

いただきとは?鳥取県が誇る伝統の郷土料理

「いただき」は、鳥取県西部、特に弓ヶ浜半島を中心に古くから親しまれている郷土料理です。大きな三角形の油揚げの中に、生のお米と野菜を詰め込み、だし汁でじっくりと炊き上げるという独特の調理法が特徴です。

見た目は大きないなり寿司のようですが、調理方法や味わいはまったく異なります。油揚げの横幅は20cm前後にもなり、ボリューム満点。一つ食べれば満腹になる、まさに田舎の知恵が詰まった料理といえるでしょう。

別名「ののこめし」「ののこ飯」とも呼ばれ、地域によって呼び方が異なるのも郷土料理ならではの魅力です。現在では、スーパーの惣菜コーナーやお祭りの屋台、道の駅などで販売されており、鳥取県を代表するソウルフードとして地元の人々に愛され続けています。

歴史・由来・関連行事|明治時代から続く伝統

いただきの起源と伝承

いただきの起源については、明治中期頃に遡る興味深い言い伝えが残されています。境港市にあるお寺の住職が、福井県のお寺と交流があり、そこで精進料理として出された油揚げ料理を大変気に入りました。その住職が鳥取に持ち帰り、地元の食材である米や野菜を詰めて炊いたのが「いただき」の始まりだといわれています。

福井県との文化交流から生まれたこの料理は、鳥取県西部の気候風土や食文化に適応しながら、独自の発展を遂げてきました。弓ヶ浜半島は砂地が多く、米作りには適さない土地も多かったため、少量の米でも満足できるよう工夫された料理として定着していったのです。

地域における位置づけ

「いただき」という名前の由来には諸説あります。山の頂(いただき)のような三角形の形状から名付けられたという説が有力です。また、「ののこ」という別名については、「の」という地域の方言や、野の子(野菜)を意味するという説もあります。

地域の行事や集まりでは、各家庭で作られた「いただき」が持ち寄られ、家庭ごとの味の違いを楽しむ文化が根付いています。お祭りや法事、地域の寄り合いなど、人が集まる機会には欠かせないメニューとして親しまれてきました。

主な伝承地域と地域特性

弓ヶ浜半島を中心とした伝承

いただきは、鳥取県西部、特に境港市、米子市、日吉津村などを含む弓ヶ浜半島一帯で特に盛んに作られています。この地域は日本海に面した砂州地帯で、独特の地形と気候が食文化にも影響を与えてきました。

弓ヶ浜半島では、漁業と農業が盛んで、新鮮な野菜と豊かな海の幸が手に入る環境にあります。「いただき」に使用される野菜も、地元で採れる旬のものが使われることが多く、季節によって具材が変わることもあります。

地域ごとの特色

同じ「いただき」でも、地域や各家庭によって味付けや具材には違いがあります。境港市では海の幸を加えるアレンジも見られ、米子市では甘めの味付けが好まれるなど、地域色が表れています。

また、お店で販売されるものと家庭で作られるものでも特徴が異なります。商品化されたものは日持ちや持ち運びを考慮した作りになっていますが、家庭料理としての「いただき」は、その家独自の隠し味や具材の組み合わせが楽しめるのが魅力です。

主な使用食材と栄養価

基本の材料構成

いただきの基本的な材料は以下の通りです:

主材料:

  • 油揚げ(大判の三角形または正方形を半分に切ったもの)
  • 米(生米を使用)
  • にんじん
  • ごぼう
  • しいたけ(干ししいたけを使うことも)

調味料・だし:

  • だし汁(かつおと昆布の合わせだしが一般的)
  • 醤油
  • みりん
  • 砂糖

各家庭によっては、鶏肉、油揚げ、こんにゃく、たけのこなどを加えることもあります。具材の種類や量は季節や好みによって調整され、それぞれの家庭の味を作り出しています。

栄養面での特徴

油揚げは豆腐を揚げたもので、たんぱく質、カルシウム、ビタミンEなどが豊富に含まれています。加熱によって豆腐のたんぱく質が変化し、海綿状の構造になることで、だし汁や調味料をよく吸収します。

ごぼうは食物繊維が豊富で腸内環境を整える効果があり、にんじんはβカロテンを多く含み、免疫力向上に役立ちます。しいたけには免疫力を高めるβグルカンやビタミンDが含まれており、栄養バランスに優れた料理といえます。

少量の米でも野菜と油揚げのボリュームで満足感が得られるため、食糧事情が厳しかった時代の知恵が活かされた、理にかなった料理です。

いただきの作り方|詳細レシピと調理のコツ

材料(6個分)

主材料:

  • 油揚げ(大判) 3枚
  • 米 2合(洗って水気を切る)
  • にんじん 1本(約150g、みじん切り)
  • ごぼう 1本(約100g、ささがきまたはみじん切り)
  • 干ししいたけ 4〜5枚(水で戻してみじん切り)

調味料(具材用):

  • 醤油 大さじ1
  • みりん 大さじ1
  • 砂糖 小さじ1

煮汁:

  • だし汁 1000ml(かつおと昆布の合わせだし)
  • 醤油 大さじ3〜4
  • みりん 大さじ3
  • 砂糖 大さじ2
  • 酒 大さじ2

作り方の手順

1. 下準備

油揚げは熱湯をかけて油抜きをします。これにより余分な油分が取れ、だし汁の味が染み込みやすくなります。油抜き後は水気を絞り、半分に切って袋状に開きます。

干ししいたけは水で戻し、戻し汁は煮汁に使うと旨味が増します。野菜はすべて細かく刻み、ボウルに入れます。

2. 具材の準備

ボウルに洗って水気を切った生米、刻んだにんじん、ごぼう、しいたけを入れます。調味料(醤油、みりん、砂糖)を加えてよく混ぜ合わせます。この段階で味をなじませることで、炊き上がりの味が均一になります。

3. 油揚げに詰める

油揚げの袋の中に、具材を混ぜたものを詰めていきます。詰めすぎると破れたり、米が膨らんで溢れ出したりするので、袋の7〜8分目程度を目安にします。

詰め終わったら、爪楊枝で口を閉じます。爪楊枝は2〜3本使ってしっかりと留めましょう。口が開いていると、炊いている間に中身が出てしまいます。

4. 煮汁を作る

大きめの鍋またはフライパンに煮汁の材料(だし汁、醤油、みりん、砂糖、酒)を入れて混ぜ合わせます。しいたけの戻し汁を加える場合は、だし汁の一部と置き換えます。

5. 炊き上げる

煮汁が入った鍋に、詰めた油揚げを並べます。重ならないように並べることが大切です。落とし蓋をして、中火で煮立たせます。

煮立ったら弱火にして、30〜40分程度じっくりと炊きます。途中で煮汁が少なくなったら、水を足します。時々油揚げをひっくり返すと、味が均等に染み込みます。

竹串を刺して、米に火が通っているか確認します。米が柔らかくなり、油揚げに煮汁がしっかり染み込んだら完成です。

6. 仕上げ

火を止めて、そのまま10分程度蒸らすと、味がさらに馴染みます。爪楊枝を取り除き、食べやすい大きさに切り分けて盛り付けます。

調理のコツとポイント

  • 生米を使う理由: 生米を使うことで、炊き上げる過程で油揚げのだしと調味料を吸収し、独特のもっちりとした食感が生まれます。
  • 火加減: 強火で炊くと外側だけ焦げて中まで火が通りません。弱火でじっくり炊くのがポイントです。
  • 煮汁の量: 油揚げが半分程度浸かる量が目安です。煮汁が多すぎると味が薄くなり、少なすぎると焦げ付きます。
  • 炊飯器を使う方法: 最近では炊飯器で作る方法も人気です。詰めた油揚げを炊飯器に入れ、煮汁を加えて通常の炊飯モードで炊くだけ。失敗が少なく、初心者にもおすすめです。

食習の機会や時季

日常食としての「いただき」

いただきは、日常のおかずとしても、特別な日のご馳走としても楽しまれています。一度にたくさん作って保存できるため、忙しい日の食事や、お弁当のおかずとしても重宝されてきました。

冷めても美味しく食べられるのが特徴で、むしろ冷めた方が味が染みて美味しいという声も多く聞かれます。このため、運動会やピクニック、遠足などのお弁当にも最適です。

季節や行事との関わり

いただきは特定の季節や行事に限定されるものではありませんが、お祭りや法事、地域の集まりなど、人が集まる機会には欠かせないメニューとして親しまれています。

特に秋祭りや収穫祭の時期には、屋台で販売されることも多く、地域のソウルフードとして多くの人に楽しまれます。また、お盆やお彼岸のお供え物として作られることもあります。

冬場には温かいだし汁で炊き上げた「いただき」が体を温めてくれ、夏場には冷たく冷やして食べるのも美味しいという、季節を問わず楽しめる料理です。

飲食方法とアレンジ

基本的な食べ方

いただきは、そのまま食べるのが基本です。油揚げごと食べられるので、箸やナイフで切り分けて、一口大にして食べます。

温かいまま食べるのはもちろん、冷めてからでも美味しくいただけます。煮汁が染み込んだ油揚げと、もっちりとした食感の米、野菜の旨味が一体となった味わいが楽しめます。

好みで醤油や辛子、生姜などを添えて食べることもあります。また、温め直す際は電子レンジや蒸し器を使うと、作りたてのような美味しさが復活します。

現代的なアレンジ

伝統的なレシピを守りながらも、現代の食生活に合わせたアレンジも生まれています:

具材のバリエーション:

  • 鶏肉やツナを加えてたんぱく質を強化
  • きのこ類(エリンギ、舞茸など)を追加して旨味アップ
  • 枝豆やコーンを入れて彩りと食感を楽しむ
  • チーズを少量加えて洋風テイストに

味付けのアレンジ:

  • カレー粉を少し加えてスパイシーに
  • 生姜を効かせて風味豊かに
  • 味噌を隠し味に使ってコクを出す

調理方法の工夫:

  • 圧力鍋を使って時短調理
  • オーブンで焼き上げて香ばしさをプラス
  • スロークッカーでじっくり低温調理

保存・継承の取組

商品化と販路拡大

鳥取県内では、いただきを製造・販売する専門店や食品会社が複数存在します。「こめや産業」などの企業が、伝統の味を守りながら商品化に取り組み、県内外への販売を行っています。

真空パックや冷凍技術を活用することで、日持ちする商品開発が進み、通販やお土産品としても人気を集めています。NHKの番組や「秘密のケンミンSHOW」などのテレビ番組で紹介されたことで、全国的な認知度も高まっています。

道の駅やサービスエリア、空港の売店などでも販売されており、観光客が鳥取の味を手軽に楽しめるようになっています。

地域での継承活動

地域の学校給食にいただきが登場することもあり、子どもたちに郷土料理を伝える食育活動が行われています。調理実習で「いただき」を作る学校もあり、次世代への継承が図られています。

地域の婦人会や食生活改善推進員による料理教室では、伝統的な作り方を教える活動が定期的に開催されています。高齢者から若い世代へ、レシピだけでなく、調理のコツや地域の食文化についての知識も伝えられています。

SNSやメディアを通じた情報発信

近年では、SNSを活用した情報発信も活発です。InstagramやTwitterで「#いただき」「#鳥取グルメ」などのハッシュタグで検索すると、多くの投稿が見られます。

地元の飲食店や製造会社が公式アカウントを開設し、商品情報やレシピ、アレンジ方法などを発信しています。ユーザーが投稿する美味しそうな写真やアレンジレシピは、若い世代への訴求にもつながっています。

YouTubeなどの動画サイトでは、作り方を詳しく紹介する動画も公開されており、県外の人でも自宅で挑戦できる環境が整っています。

行政の取り組み

鳥取県や市町村では、郷土料理の保存・継承を目的とした様々な取り組みを行っています。農林水産省の「うちの郷土料理」データベースにも登録され、公式な郷土料理としての地位が確立されています。

観光振興の一環として、「いただき」を含む郷土料理を活用したイベントやフェアも開催されており、地域の食文化を発信する機会が増えています。

いただきが買える場所・食べられる店

スーパー・直売所

鳥取県内のスーパーマーケットでは、惣菜コーナーで「いただき」を販売している店舗が多くあります。特に地元密着型のスーパーでは、その日の朝に作られた新鮮な「いただき」が並びます。

道の駅や農産物直売所でも、地元の生産者が作った「いただき」を購入できます。手作りならではの温かみのある味わいが楽しめます。

専門店・製造会社

「こめや産業」をはじめとする専門の製造会社では、工場直売や通販で商品を提供しています。真空パックや冷凍の商品は日持ちするため、お土産や贈答品としても人気です。

飲食店

鳥取県内の郷土料理店や居酒屋、定食屋などでも「いただき」をメニューに取り入れている店があります。温かいだし汁と一緒に提供されることもあり、家庭とはまた違った味わいが楽しめます。

通販・オンライン購入

県外からでも購入できるよう、多くの製造会社や販売店がオンラインショップを開設しています。楽天市場やAmazonなどの大手通販サイトでも取り扱いがあり、全国どこからでも鳥取の味を楽しむことができます。

いただきと他の郷土料理との比較

いなり寿司との違い

見た目が似ているため、いなり寿司と混同されることがありますが、調理法と味わいは大きく異なります。

いなり寿司:

  • 炊いた酢飯を甘辛く煮た油揚げに詰める
  • 冷たい状態で食べる
  • すし飯の酸味と油揚げの甘みのコントラスト

いただき:

  • 生米と野菜を油揚げに詰めてだし汁で炊く
  • 温かくても冷めても美味しい
  • だし汁が染み込んだ一体感のある味わい

他地域の類似料理

いただきと似た郷土料理は、全国各地に存在します:

福井県の「あげづめ」: いただきの起源とされる料理で、油揚げに具材を詰めて煮る調理法が共通しています。

石川県の「いなりずし」: 地域によっては炊き込みご飯を詰めるタイプもあり、いただきに近い形態です。

岡山県の「ばらずし」: 油揚げではなく、ちらし寿司の形式ですが、具材の豊富さや郷土色の強さが共通しています。

これらの料理との比較からも、地域の食文化の多様性と、相互の影響関係が見えてきます。

まとめ:いただきの魅力と今後

鳥取県の郷土料理「いただき」は、明治時代から続く長い歴史を持ち、地域の人々に愛され続けてきました。大きな油揚げに生米と野菜を詰めてだし汁で炊き上げるというシンプルながら奥深い調理法は、食材を無駄なく活用し、少ない米でも満足できる工夫が詰まっています。

各家庭で受け継がれてきた味は、地域のアイデンティティそのものであり、お祭りや行事、日常の食卓を彩る存在として、世代を超えて親しまれています。

現代では、商品化や通販の普及により、県外の人々も気軽に「いただき」を楽しめるようになりました。SNSやメディアを通じた情報発信、学校給食での提供、料理教室での伝承活動など、多角的なアプローチで保存・継承が図られています。

伝統を守りながらも、現代の食生活に合わせたアレンジや新しい調理方法も生まれており、「いただき」は進化し続ける郷土料理といえるでしょう。

鳥取県を訪れた際には、ぜひ本場の「いただき」を味わってみてください。そして、自宅でもレシピに挑戦して、鳥取の食文化の豊かさを体験してみてはいかがでしょうか。油揚げから溢れるだしの香りと、もっちりとした米の食感、野菜の旨味が一体となった味わいは、一度食べたら忘れられない美味しさです。

「いただき」という名前に込められた、山の頂のような三角形の形と、感謝の気持ちを込めて「いただく」という意味。この郷土料理には、鳥取の人々の暮らしと文化、そして食への敬意が詰まっています。次世代へと受け継がれていくべき、大切な食文化の一つです。

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